約 3,847,715 件
https://w.atwiki.jp/poke_ss/pages/2622.html
15ページ目 「それで、どうなんだい? ボク達のもとへ来るかい?」 死神の手が差し出される。 「お断りします……信条皐さん」 兄である皐に対して、赤の他人であるかのような呼び名を使った。 「ははは、そう言うと思った……~よっ!」 「っ!?」 美咲めがけて一閃。 刀を打ち合わせ、身体を捻って回避しようとする。しかし、美咲の華奢な身体は床にたたき付けられた。 「くっ……!」 間髪入れず皐は床からえぐるように刀を振るった。デスクとパソコンが巻き添えをくらい、火花を散らしながら真っ二つに切り裂かれた。美咲は寸前で向かって左に転がり難を逃れた。 すかさず美咲はデスクを蹴飛ばす。切断された棚からは煙幕手榴弾(スモークグレネード)がこぼれ落ちてきた。バランスを失ったデスクは力無く倒れる。 その間皐は懐から拳銃を取り出していた。 S W M500-CUSTOM。世界最強の超大型の回転式拳銃と呼ばれるS W M500を信条皐が独自に改造したものだ。装弾数を格段に増量、回転式拳銃であるそれを全自動小銃の仕組みに無理矢理改造。結果、もともと凄まじいものだったS W M500の衝撃が更に上乗せされ、普通の人間が扱えば忽ち手の骨が砕けるほどになってしまった。 しかし超能力者である信条皐にはなんのその。威力も連射速度も折り紙つきの狂気の拳銃と化した。 そんな拳銃を取り出し、美咲に向けて発砲をしたのだ。 美咲は起き上がりながら日本刀で弾丸を弾き飛ばすが、さすがは世界最強の拳銃、切れ味を容赦なく奪い取っていく。 「んぎ……!」 刀から伝わる衝撃に顔をしかめつつ、煙幕手榴弾を皐に投げつけた。床を転がるそれが爆発する。 「っ! 逃げられるとでも……」 ドアめがけて発砲する。弾は煙を掻き分けるように飛ぶ。凄まじい銃声と共に、ドアが吹き飛ぶ音が聞こえたが、弾丸が人間の身体に喰らいついた音は聞こえなかった。――外したか。 「どうせ外国には蘇生能力者がいるんだ。今殺したって構わないんだ」 美咲に聞こえるように言う。 しかし美咲からの返事は無い。返事は無い代わりに、 「!」 《裁きの刃》が皐の足に襲いかかった。幾多もの刃は皐の足を貫通し、彼の身動きを封じた。 ――みっちゃんの能力の射程がどれくらいかは覚えていないが、そう遠くは無いはず。 「えーと確か……」 ここの建物は隔離されているようで実はされておらず、高層階にはきちんと窓が付いていた。皐はその窓から入って来た。 「この方角かな?」 視界が煙まみれのなか、窓と思わしき方向に拳銃を向ける。狂気の拳銃が弾丸を吐き出す。――手応えアリだ。弾丸が豆腐を指で突き破るかのごとく窓を割った。 風が部屋の中に吹き込む。煙は風に押され、破壊されたドアへと押し寄せる。皐の視界はこれで確保された。 「……」 ――逃げられた。皐ははじめにそう感じた。部屋の中には既に居ないようだ。 「ちぇっ」 舌打ちをしながら、突き刺さった刃を無理矢理振りほどく。ブチブチと足が裂ける痛々しい音がする。しかしすぐに再生するのだから問題は無い。 「……!」 足音が近付いてきた。美咲の履いていた運動靴とは違う足音だ。皐は仕方なく窓から脱出しようとする。 その瞬間。 「はぁっ……はぁっ……」 足音が近付くなか、敢えて美咲はロッカーから出た。当然皐はそれに気付いたが、もう時間は無い。あまり見られたくはないので早く逃げなければ――。 「っ……? 小賢しいぞみっちゃん」 再び《裁きの刃》が皐の足を襲った。しかし皐はすぐに振りほどく。再生するまでほんの少し時間がかかるので動揺した。 ドアの異変に気付いたのか、足音が急速に速まる。 「おい信条! 大丈夫か!」 出て来たのは坂口だった。美咲はふと破壊された窓のほうを見た。皐は既にいない。 「ふぅ……ふぅ……」 息を落ち着かせる。 坂口を見上げると、先程自分が見ていた方向を少し睨んでいた。 「って、信条、どうしたんだ……!?」 坂口はしゃがみ込み、美咲の両肩を掴んだ。 「大丈夫……バカ兄貴に迷惑かけられただけだから」 顔を近づけすぎだ、と言いたいが心配してくれている人にそんな事は言えなかった。少し照れる。 「バカ兄貴? ……よくわからんけど怪我が無くて何よりだ……」 坂口は安堵のため息をついた。 しばらくして美咲は皐の事を話した。――彼のやっている事も、私の主張も、坂口は黙って聞いてくれていた。 信条皐は、執行委員会本部の屋上にいた。 スマートフォンを取り出し、長官に連絡を取るつもりだ。 「もしもし」 「もしもし……君か」 「みっちゃんはダメだったよ」 「だろうね。君も無理するんじゃないぞ。……美咲君を殺そうとしただろう?」 皐は少し目を見開いた。 「っ、バレた感じかい?」 「バレた感じだな」 やれやれ、と長官はぼやく。 「そういえばもう治したからいいんだけどさ」 「なんだ?」 「坂口慎吾っているでしょ? 彼に腕の骨をへし折られたよ」 皐は右腕をちらりと見た。 「何で折られたんだ?」 「たぶん念力系統の能力だよありゃあ」 「……あの少年がか……」 「?」 皐は首を傾げる。 「いや、こちらの話だ。ではすぐに帰還してくれたまえ」 「御意」 長官との連絡を終えた皐は、屋上から飛び降りた。 次へ トップへ
https://w.atwiki.jp/shoki20141/pages/20.html
久しぶりにお風呂屋さんでフルーツ牛乳を飲みました。甘い! スウィーツとやらをインターネット通販で注文してみた。納期に3日もかかるとか。。。賞味期限が減ってしまうよ。。。 海外携帯をこじんにゅにゅうできるとか。英語駄という事を除けば、にほんの通販サイトでのかいものと手間は大きく変わらないそうです。 あ~、だからか~はいはい。 話が明後日の方向にいっちゃいましたね^^; そうそう、デートの時、貴方はは割り勘派?それとも男性が奢る派?どっちが良いのでしょうか? 役に立つ情報がないかなとずっと探しています。 未来を紡ぐ格言・名言:若い女は美しい。しかし、老いた女はもっと美しい。 今夜はそろそろ眠ります。おやすみなさい。
https://w.atwiki.jp/gep13b0/pages/20.html
レディースファッションの鞄の売れ筋ランキングを見てたら、リュックサックが1になってるある。リュックなんて隠せば買うのかなぁ。防災用に買ったけどあんまり使いませんよね。スクールガール風ファッションみたいなのによるのかしら。 大人かわいいとか書いてるけどこれ持って行けないやつだな。若い人なら可愛いかもね。でも結構流行ってるのかもしれませんね。あと他にもリュックサックが売れてるのかなoo信じられないのう。 本当は普通のブランドのカバンとかナイロン地のもあるかも。元気に強い鞄と結構必要だったりするよね。安川のカバーはもう使えない。
https://w.atwiki.jp/keikenchi/pages/226.html
タブンネ「何で私ってこんな微妙な能力値なんだろう・・・」パラパラ タブンネ「ん?このマリルリってポケモン、全部の能力が私よりちょっとだけ低いわ! しかも耐久激戦区の水タイプw存在価値ないわね~ww」 マリルリ「リルリルリル・・・」 タブンネ「あwマリルリが歩いてきてる!からかってやろ~っと!」 タブンネ「ねねねね~!そんな種族値で恥ずかしくないのw?」 マリルリ「な、何ですかいきなり…」 タブンネ「水タイプでその耐久だとライバルが多過ぎて誰も使ってくれないよね~w」 マリルリ「し、失礼な」 タブンネ「ついでにとくこうが50しかないと得意のハイドロポンプも生かせないwプ」 マリルリ「いらないよそんなの」 タブンネ「耐久やろうにもろくな積み技も回復技もないwホント存在価値ゼロすぎww」 マリルリ「むきーっ!だったらぼくの強い所見せてやるんだから!(怒)」 タブンネ「どうぞどうぞw」 マリルリ「ふんっ!(アクアテール)」 タブンネ「ミブェッ?!!あ、頭が割れる~!」 マリルリ「とう!(アクアジェット)」 タブンネ「グミィ!!痛い!痛いよ!!」 マリルリ「ぐぐぐぐぐ・・・(きあいをためている)」 タブンネ「ひ、ヒエ~!!ごめんなさいごめんなさい私が悪かったですすごくわわわ悪かったですゆっゆっゆゆるしてくださいあっあっあっあああ~~!!!」 マリルリ「おりゃ~!(きあいパンチ)」 タブンネ「ミギュェグボェッ!!(絶命)」 ダゲキ「10年以上空手やってるけどよ・・・・本気で顔面にきあいパンチ入れるなんて見たことねェよ」 サワムラー「というかシンプルビームすりゃよかっただろ、馬鹿だぜホントに」 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/bokuchu777/pages/171.html
すでに学園を包む衝撃は絶え間ないものとなっていた。各所で行われている戦いが、それだけ激戦となっているのだろう。 それはつまり、まだみんな生きていることの証拠。誰も俺達は欠けていない。だから今はただ、走る。 乃愛「それにしてもここまでお膳立てされていると、次は誰が出てくるのかつい考えてしまわないかい?」 大翔「ええまあそりゃあ考えますけど……後残ってるのって言うと」 美優「ファイバー、エラーズ、それからポーキァ……ですね」 ポーキァか。また嫌なやつが残ったもんだ。また絡まれたりするんだろうか。前回存分に罠にはめてぼこぼこにしてやったし、ガキっぽいあいつは相当怒ってるんじゃないだろうか。 ……むしろガキっぽいから逆に忘れてたりな。そっちのほうがありそうだ。 ポーキァ「なぁーんかすっげぇ馬鹿にされてる気がするんだけどぉー?」 大翔「うぉ、ポーキァ!? よう、そんなところで黄昏てどうした」 窓に腰掛けていたポーキァにまったく気づかずに通り過ぎるところだった。思わず普通の知り合いにするように話しかけてしまったではないか。 ポーキァ「どうもこうもねーよ。もう少し早く来るかと思ったんだけどなぁ。待ってるこっちの身にもなれっつーの」 どうやらここで待っている間にやる気がなくなってきたらしい。 大翔「別に無理してやるこたないだろ。んじゃ、俺達は先に行くぜ――っと!」 軽く退いた頭の鼻先を小さな雷撃が走った。ちり、と鼻先が少し焦げた。 ポーキァは窓枠から立ち上がる。ぱりぱりと、青白い電気が弾けた。じり、と何かが焼ける音と嫌な臭いが漂いだす。 ポーキァ「悪ぃけどそーゆーわけにもいかねえんだ。ようやく俺達の目的のブツが手に入るんだからな、アンタ等に余計なことをされちゃあ困る」 大翔「さっきと言ってる事が逆じゃねーか。それなら、俺達を待つのはおかしいだろ」 全員でかかってくるか、あるいは俺達の手の届かないところにさっさと行ってしまえばいいのだ。後者に関しては、この学校に何か仕掛けがしてあるのだろうと大体推測が立つ。だが、前者は? なぜ明らかな邪魔になる俺達をさっさと潰さない? ポーキァ「俺達にも色々都合があってね。まあとりあえず、あんたらはここで俺と遊んでてよ」 大翔「お断りだクソガキ」 美優「絶対、や!」 レン「断固拒否する」 乃愛「頼み方に誠意が足りないな誠意が。土下座でもしたまえ、少年」 俺達の一斉の拒絶に、ポーキァがこめかみに血管を浮かべ目を吊り上げる。それにしても乃愛さん、何気に一番酷いこと言ってませんでしたか。 大翔「というかだな、ポーキァ。お前は重大なことを忘れている」 ポーキァの背後――俺達が今しがた通ってきた道を指し、その後、俺の背後――これから進むべき方向を指す。 立ち位置が、徹底的に悪すぎる。ていうかアホだろお前。 大翔「そんなわけで、俺達はせっかくだからお前を無視して進ませてもらうぜ!」 ポーキァ「うお、おいこらちょっと待て!!」 ポーキァに背を向けて走り出す――なんて事を、当然黙って見逃すようなやつではない。 逃げる俺達に対して、次々に雷撃を放ちながら追いかけてきた。炎や水、氷やら風ならともかく雷となると基本的に回避は不可能だ。美優の魔法でどうにか防いでいるが、さすがにいつまでも逃げられるとは思えない。何より美優への負担が大きすぎる。 大翔「やっぱり、誰かが足止めしないと無理か……?」 けど、誰にだ? 相手がポーキァで雷電の特殊魔法では、この中でまともに相手ができるのは俺しかいないだろう。何しろこの至近距離、相手の魔法がどこに来るのか感知できる俺でなければかわすことはできないからだ。 ……けど、なぁ。俺がここでポーキァを引き止めて残りの三人だけを進ませるのも気が引ける。エーデルに頼まれた手前もある。 いや、俺は別に物語の主人公でもなんでもないんだ。できる人間がやることをやるべきだろう。 大翔「よし、ここは俺が残って、ポーキァを引き止めます。だからみんなは――」 美優「だめ、絶対にだめ!!」 美優に全力で否決された。なぜだか怒っている。 美優「ユリアさんは、お兄ちゃんが助けに行かないとだめなの! お兄ちゃんが行かないとだめなの!」 大翔「いやそんなこと言ってる場合じゃ……大体なんでいきなりそんなルールができてるんだよ」 美優「だめなものはだめ! じゃないとお兄ちゃんが……」 乃愛「あーはいはい、二人とも落ち着いて。ここは私が引き受ける、それで全て解決だろう?」 俺達の間に割って入った乃愛さんは、足を止める。悠然と立つその姿に隙はない。 大翔「いいんですか、乃愛さん? いくらあなたでも、あの雷撃は」 乃愛「これでも君よりも長い間タイヨウさんの師事を受けていたんだ。それに絶体絶命の状況など、すでに慣れたものだ。あんな風に、やんちゃな子供の躾もね」 そういって笑った乃愛さんの顔は、なんというかその、ぞっとしないものだった。 ああそういえば、昔乃愛さんが起こったりなんかするときはあんな顔してたっけ。うん、ひたすらに怖かった。何しろガキ相手に容赦しねぇ。 大翔「わかりました、お願いします。けど、絶対に死んだりしないでくださいよ」 乃愛「悪いが、あの程度の相手に死ぬ方法が思いつかなくてね。さあ行きたまえ少年少女、君達の望むその先へ」 芝居がかった言葉とともに、乃愛さんはポーキァへ一気に距離をつめた。すべるような動作でポーキァに一撃を加えたのを見送り、俺達は逆の方向へと走り出した。 階段は、図ったかのようにすぐそこにあった。 ……やはり、この戦いもやつらの目論見どおりなのだろうか。だがその結果までその通りにはさせない。 意思を改めて確かめ、階段に足をかけた。 なるほど、と。そう思った。 話には聞いていたし多少の言動から想像はしていたが、それでもこうやって向かい合うと、そう思わずにいられなかった。 乃愛「確かに彼らに似ているようだな。こういうものは見ていて辛いだろうな、嫉妬するのもわかる」 殴り飛ばされたポーキァが立ち上がるのを見ながら、乃愛はどこか醒めた様子で呟いた。 結城大翔と黒須川貴俊。彼等とポーキァはよく似ていた。いや、それを言うのなら、ファイバーたち全員が似ているといえるだろう。 乃愛「さて、それを矯正するのも教師の役目か。さあかかってきたまえポーキァ君、存分に君を叩いて打ちのめし鍛えなおしてやろう」 ポーキァ「ちっ、なんなんだよアンタは……ああ、ファイバーからそういえば聞いたぜ、最悪に凶悪なオンナだって」 血の混ざった唾を吐き捨てながら、四肢に雷を纏う。乃愛は答えず、冷静にその様子を観察する。構えから発動までの時間、その間のポーキァの視線や表情、筋肉の動き。感じられるありとあらゆるを解析する。 乃愛の魔法は『錯覚』であり、相手の脳に偽りの情報を叩きつけることだ。本来ならば実践向きの能力ではない。故に解析する。偽りの情報を送り込むためには、正しく自他周囲の情報を自身が認識しなくてはならない。そして糸口を掴む。己の勝利へといたる道筋への入り口を。 乃愛「覚悟したまえポーキァ君。その最悪に凶悪な存在が、数年ぶりの全力で目の前の獲物を屠ろうとしているのだからね」 ざわり、と。空気の質が変わる。 乃愛は静かに構えを取る。それは、大翔と同じスタイルの構え。結城大洋が世界に残したもののうちの、そのひとつ。 ――ファイバーが奪い去った命の、遺産。 乃愛「運命とはどこまでも皮肉なものだ。だがそれも、一興というのかな」 ポーキァ「運命ね、俺のいっちばん嫌いな言葉だ。アンタこそ覚悟しろよ、俺の一撃はかなり応えるぜ?」 青白い光が暗い世界を照らしつける。 暴れまわる雷撃は天井を床を削り、電灯を破裂させる。 乃愛「出力は確かに驚異的だな。だが――」 互いににらみ合いながら、乃愛は静かに過去を思い出す。彼女にとって誰よりも敬愛すべき存在であり、今なおその心に住まう存在。結城美玖。 優しく気高く誇らしく、そしてそれ以上になによりも型破りで、強かった。彼女に比べれば、目の前の力が恐ろしいなどと欠片ほども思うわけがない。何よりも自分には彼女の言葉が残っているのだから。それがある限り、自分には何も恐れるものなどないのだと。 そう確認し、確信し、乃愛は笑う。そして彼女は、乃愛をやめる。 ノア「さあはじめようか青少年、持てる力の全てでぶつかって来たまえ! そして君にも教えてやろう、君の知らない世界、弱肉強食のみで構成されたあの忌まわしき世界においてすら、生まれてきた瞬間に恐怖された、私という存在を」 ノア・アメスタシアの全力。 ノア「『敗北とは勝てないことではなく相手を負かせないことだ』という、その屁理屈をどこまでも信じ続ける私の力を」 それは、徹底的に敵を叩き潰すことに特化した戦法。いや、戦法も何もないそういった存在となること。 彼女と戦うならば、そこに引き分けなどは存在しない。後に残るのは勝ちか負けのみ。そして敗北即ち死の世界で生まれた彼女は、敗北をどこまでも拒絶し、貪欲に勝利を奪い取る。 故に彼女は常勝無敗。ファイバーをして最悪に凶悪といわしめた彼女を知る少ない者達は、彼女をこう呼ぶ。 大蛇。敗北を喰らう蛇。 雷撃と錯覚。ベクトルのまったく違う力が、激突する。 あと一階。あとひとつ階段を上れば、屋上だ。そして屋上は棟ごとに分離していることから考えても、使うべき階段はすでにわかりきっている。 大翔「中央棟の階段!」 中央棟へ向けて駆ける俺達。もはや遮るものはなく、目的地へと向けて突き進むだけだ。 その前に悠然と現れたのは―― 大翔「変態仮面!!」 エラーズ「ああもう、なんだか私としても訂正するのも面倒になりますね、これは」 狐の面の向こうでため息をついた。確かそう、エラーズといったか。別に変態仮面でいいじゃんか。わかりやすいし。 大翔「んじゃあそのお面を真っ赤に塗りつぶせよ。そしたらなんか別の名前考えるから」 まるちゃんとか。 だがエラーズは俺の親切な提案をさらりと無視した。 エラーズ「さて少年、ファイバーが御指名だ。ひとりでこの先へ行ってくださ」 そう言って、階段の前から退くエラーズ。随分と親切なことだが……ひとり、だと? 大翔「お前に言われなくても行くのは行くさ。でもわざわざ譲ってもらわなくても、俺達三人でお前を叩き込んで通るって選択肢もあるぜ?」 エラーズ「また随分と悠長な話ですね。三人なら私を一瞬で倒せると思ったのですか? 舐めないでもらいたいですね」 エラーズが不快そうに声を沈めた。なんとなく、気配も変わる。 エラーズ「言っておきますが、そんなことは不可能ですよ」 レン「随分な自信だな。それでは、試してみるか?」 キン、と静かに剣に手をかけるレンさん。二人の間に静かな緊張が生まれる。 エラーズ「ふふ……私を甘く見すぎですよ皆さん。私はね……逃げ足にはこの上ない自信があるのですよ!」 大翔「偉ぶって情けない事を大声で宣言してんじゃねえ!」 しかも微妙に共感してしまいそうになった。こいつら本当に世界を滅ぼす気あるんだろうな。 なんか壮大なドッキリにでもはめられているんじゃないかと疑いたくなってきた。 エラーズ「まあ冗談はともかく、私もそうやすやすとやられはしないということです。そうそう、それから、私達の計画は時間がたてば成就されますとも言っておきましょう」 つまりのんびりしている暇はないということか。でもそれならわざわざ俺を通すのはなぜだ? やはりそれも計画に関係があるのか。もしそうならば、むしろ俺がひとりでのこのこ行くのは逆に危険だともいえる。それでやつらの計画が達成されては元も子もない。 だが、このまま放置していてそれで本当に連中の計画が達成されればそれで終わりだ。さて、どうする――? 美優「お兄ちゃん、悩んでも仕方ないよ。先に行って」 レン「そうだな、このままここで悩んでいるわけにもいかないのなら、あとは賭けるしかないだろう」 大翔「美優、レンさん……わかった。それじゃあ、先に行ってまってる」 俺は二人から離れ、階段に向かう。エラーズは面のおかげで、その表情は見えない。なにを仕掛けてくるかもわからない。油断なく注意しながら、その横を通り抜け―― エラーズ「まあ、やるだけやってみなさい」 大翔「え?」 ようとしたところで、何か呟きが聞こえた……と、思う、んだが。 エラーズを振り返っても、その顔はただまっすぐと美優とレンさんに向けられていた。励まされた? いや、まさかな。俺は階段を駆け上がり、屋上への扉に手をかけた。 ――ギィン! 背後で金属のぶつかる音。振り返ると、レンさんがエラーズに斬りかかっていた。美優も今にも魔法を放とうとしていた。 美優が、小さく笑った。いつもの、気の弱いものじゃない。しっかりとした笑顔。 行ってらっしゃい。 たぶん、そういわれた。だから俺も、親指と笑顔でそれに返事をする。 行ってきます。 剣戟と爆音を背に、俺は扉を一気に開いた。 エラーズの動きは鍛えられたものだった。その様子からなんとなく察してはいたが、実際に戦ってみるとその強さを実感する。 美優が放つ炎に合わせて、突撃。距離を一瞬でつめた勢いと共に放たれた突きはしかし、エラーズを捉えずに壁を粉砕するのみ。 レン「あの男、先ほどの言葉はある意味冗談ではなかった、ということか。ならば……」 魔法との連携の一撃を事もなくかわすあの動き。只者ではない。だがしかし、レンの攻撃手段は剣だけではない。 レン「これはどうだ! 『単剣一刃』!」 レンの剣に魔力が宿り、その剣を床へと振り下ろした。 瞬間、レンの剣筋をなぞるように白い光が現れ、光は床を砕きながら一瞬でエラーズへと迫る。だが、まるでそれを知っていたかのように最小限の動きで光の刃をかわし、反撃の拳を打ち込む。 重い一撃を、剣の腹で受け止める。 美優「レンさん、下がって!」 氷の刃が次々に現れ、エラーズへと襲い掛かる。が、取り囲むように発生したそれを、背後からの攻撃すら振り返らずに回避する。 レン「なんなんだあの動きは! あれではまるで――」 美優「お兄ちゃんみたい」 レンが言葉の途中ではっと息を呑み、その言葉を美優が受け取った。 まるで魔法の発生とその効果を先読みしたような動き。それはまさしく、大翔が違和感を感じるといっていたその動きそのものだった。違いがあるとすれば、特殊魔法の発生さえも感知してしまう、というところか。 レン「くっ、あの体術に加えてこちらの魔法を感知するとなれば、かなり厄介だぞ」 一端美優の傍まで距離をとる。エラーズは積極的に仕掛ける気はないのか、追撃をかけてくる様子はなかった。 レン「すまないな、ミユ殿。私一人で押さえ込めたのならよかったのだが、それも無理そうだ」 美優「だいじょうぶです。これでも、お兄ちゃんの妹なんですよ」 美優は力のこもった瞳でまっすぐにレンを見やる。 レン「君は本当に、ヒロト殿を好きなのだな。ヒロト殿が羨ましいことだ」 美優「それを言うなら、レンさんもユリアさんが大好きじゃないですか」 確かに、と笑う。 レンにとっては、ユリアは姫という以上の存在だった。その身分など関係ない、ただその存在に自分は仕えると、そう誓えるほどの。 だからこそ、彼女にとって結城大翔という存在は扱い辛いものだった。ユリアが彼に対して、単純な親愛以上の感情を抱いていると察してしまってからは、特に。 美優「ごめんなさい、レンさん。うちのお兄ちゃんがあんなので……」 レン「うん? ああしまった、顔に出ていたかな」 美優「いえ、なんとなく。でも、ワタシはああいうお兄ちゃんは、見ていて嬉しいです。正直、うまくいってほしいと思っています」 レン「私もそう思っているのだが、なかなか感情というものは厄介なものでな」 割り切れないこともある。 いや、レンにとってこの世界は割り切れないことで溢れている。だがそれでも、その中でも、ただひとつ信じると決めたものがある。 レン「なに、悩むのは後だ。今は、我々のやるべきをやらねばな」 美優「はい、そうですね」 その決意を立ててからすでに何年も経った。その間、その決意が揺らいだことは一度もない。そして今、この瞬間も。 レン「いくぞエラーズ、世界の敵! 我が名はレン・ロバイン。ここより彼方の異世界の王国に属する、ユリア・ジルヴァナただひとりの剣だ!」 美優「あ、あう……! い、いきます! 私は結城美優。絆だけで繋がった、お兄ちゃんとお姉ちゃんの妹です!」 その二人の名乗りに、仮面の奥でエラーズは小さく笑った。決して馬鹿にしたわけではない。むしろ、どこかうらやむような。 エラーズ「ええ、かかってきて下さい。私はエラーズ。醜く小さな願いを棄てきれずしがみ付く、世界の誤謬!」 割れんばかりに地を蹴り、壁を使って飛び上がる。そのレンとそれに追随する雷を迎え撃つエラーズ。 魔法は悉くかわされ、剣は受け流される。それでも、ひたすらに剣は翻る。剣が魔法が拳が嵐のようにぶつかり合う。 黒い雲に覆われた空。びゅうびゅうと吹き付ける風。 手を離すと、支えを失った扉は重い音を立ててしまった。視線はまっすぐに前を向いている。その先には両手両足を紐で縛られたユリアと、その横に立つファイバー。二人の視線は向かい合っており、ユリアの瞳には…… 大翔「ファイバアァァァ!」 何も考えずに地を蹴る。 大翔「てめえ、なにユリアを泣かせていやがる!!」 涙に濡れた瞳。やつがなにをしたのかは分からないがそんなこと分かる必要はない。ユリアを泣かせた時点で、あいつをぶっ飛ばすことは決定事項だ! 右の拳に力を集める。いける! その確信と共に、力を解き放つ! 魔法は空を貫き、ファイバの鎧の一部を削り取った。くそ、直前でかわされた! だが距離は開いた。今のうちにユリアを―― ファイバー「その程度の腕で、我らの夢を阻めると思うな!」 ドンッ! 脇腹に鋭い一撃。体が横に折れ曲がり、フェンスに激突する。 大翔「ゲホッ、ぐ……そ……」 痛みに顔をしかめながら、立ち上がる。衝撃は逃したので、ダメージはそれほど酷くない。 ファイバーを睨みつける。俺とやつの立ち位置はちょうどユリアを挟んで対極に位置している。今の状況だとユリアを解放するのはちと無理か。 再び地を蹴り今度はファイバーへと向かう。ファイバーは風のハンマーを次々に放ちながら突っ込んできた。感覚を便りにハンマーをかわす。 大翔「おおお!」 ドンッ! 空気が爆発したような音と共に、ファイバーと激突する。流れるように体を捻り、顔面へ蹴りを放つ。首を捻るだけでかわされ、反撃に拳を振り下ろされる。両腕を使って受け止め、半歩下がる。 一撃一撃が、いちいち重い! けど、どうにかしないと。ユリアを、助けるために! 両足で力強く地を踏みしめ、腹に力を込める。倒すべき相手を睨みつけ、俺は躊躇うことなく踏み込んだ――。 呆然と……まるで意識が肉体から遊離したような気分で、私は目の前の戦いを見ていた。 両手両足は魔力を封じる縄で縛られているおかげで、魔法を使うこともできない。ううん、たとえ魔法を使えたとして、今の私が使うのかどうか。 この瞳から涙が零れていることにさえ、ヒロトさんの言葉で気づいたというのに。 ユリア「――――ヒロトさん」 かすれた声で、無意識のうちに口をついてでた、彼の名前。それを呼ぶだけでこんなに心が苦しいのは、やはりファイバーが先ほどいった通りなのだろうか。 ファイバー『貴様は所詮、タイヨウの死の責任の重さを軽くしようとしているだけなのだろう。だからこそ、あの小僧の傍にいるのだろう。そうやってこの世界を守ってあの小僧さえ守りさえすれば、その責任から解放されると思っているのだ!』 違う。そんなの違う。 だって、ヒロトさんは言ってくれた、もう怯えなくていいって。あの瞳で伝えてくれた、もう背負わなくていいって。 だから……だから私は!! ファイバー『冷静に考えて、貴様はもう元の世界へ帰っているべきだった。まあ我々としてはそれで助かるが……貴様がそうしなかった理由は何だ。いつまでも縛られているからだ。実に、自分本位な理由にな』 ……そうなのだろうか。そうなのかもしれない。 私も、考えていた。なぜ私は帰ろうとしないのか。そう私が決めたから? うん、確かにそう。でもここまで事態が進行した以上、ファイバーたちが現れたあの時点で、一国の王女として私は国へ引き返すべきだった。明確な敵が現れ、それが私を狙っているのだから。 けれど私はどこまでも、自分の力でこの世界を……ううん、彼を守ることにこだわった。それは、なぜ? 答えは私自身にも、わからない。けれど、本当にファイバーの言うとおりなら。それなら私はなんて愚かしいのだろう。 この苦しみも悲しみも切なさも全て、私の身勝手なもの。 ヒロトさんのように、純粋な意志のみに根ざしたものではない、卑しいもの。そうだというのなら、私は……彼の前に、いるべきではないのかもしれない。 それはなぜか、胸を締め付けるほどに悲しいこと。ねえヒロトさん、私はあなたの傍にいてもいいのかな? 私は、どうしたら…… 大翔「ごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃ! てめえは質問してばっかだなクソッたれ!!」 はっと顔を上げた。ヒロトさんは服はところどころ破け傷も負っていたけれど……それでも、あの力強い瞳の輝きは決して鈍ってなんか、いない。 ファイバー「ならば貴様は答えが出せるのか、自分が今、何のためにここにいるのかという答えを!?」 拳を、体をぶつけ合いながら、ファイバーは問いかけていたのだ。なにをかは分からない。けれど、その言葉はまるで自分に叩きつけられたかのように全身に衝撃を受けた。 大翔「答え? 答えって何だよ。答えがあれば全部納得できるのか、答えさえあれば全部信用できるのか? 大体俺がここにいんのはてめえがユリアを攫ったからだろうが、いちいち答えるまでもない!」 ファイバー「なぜ彼女を助けようと思う。それは世界を救うためか、それとも個人的な感情によるものか?」 炎や氷、風や雷が次々と放たれ、ヒロトさんはそれをかわすけれど全てをかわしきれはしない。少しずつ、全身の至る所に傷を増やしていく。 それでもまっすぐにファイバーを睨みつけ、ヒロトさんは走る。 大翔「理由なんかどうでもいい――」 その心の、赴くままに。 実力差は明らかだった。身体能力にはそこまで目立った差はない。動きだけならむしろ鎧のある向こうよりこっちのほうが早く動けるくらいだ。 だがしかし、俺の腕力と技術じゃその鎧の向こうにまで攻撃を届けさせられないし、魔法を使うにしても完全に扱えない俺じゃあ魔法を放つまでにどうしても一瞬の隙を生んでしまう。目の前の男相手にその隙は致命的過ぎた。 そしてその実力差のせいか、野郎はやたらと余裕綽々に俺に対してあれこれ質問してきやがるのだ。 何のために戦うのかに始まり、この世界を守る意志があるのか、父の弔いのつもりか、仲間を見捨てることに躊躇いはなかったのか、なぜここまで来たのか。 どれもこれもふざけた質問ばかりだ。 大翔「理由なんかどうでもいい、俺は俺がこうすると決めたことをやり抜いているだけだ!!」 だから足を止めない、下を向かない。前へ進む。それしかできないのなら、できることを貫き通すだけだ! ガゥンッ! 鎧の板金を強く打ち据える。ただの鋼じゃない、異常な硬さ。おそらく、魔法か何かの効果でもあるんだろう。そういうことができるのかどうかはわからないが。 ファイバー「理由もなく理想もなく願いもなく目的もない、と?」 大翔「そうだよ、なんだ不満そうだな。人のやり方にけちつけんなよ。お前らなんか散々人様に迷惑かけてんだから」 ファイバー「だが我らには理由があり願いがある。それがある限り貴様に負けはしない」 そうですかそれはえらいですね花丸でもくれてやるよ。だから帰って糞して寝てろ。 大翔「お前らのその願いやらなにやらに巻き込まれる人の身にもなって見やがれってんだよ!」 ガゥンッ! ガゥンッ! 体重と遠心力を乗せた回し蹴り。繋いでかかと落し。正確に防がれてしまう。技術の差というよりは、経験の差か。 ファイバー「そうは言うがな、それなら貴様を巻き込んだ姫君を貴様はどうする?」 大翔「あぁん? なんだそれ、どういう意味だ?」 いつの間にかこちらを凝視していたユリアの瞳が揺れた。なぜかその瞳に迷いが見える。 ファイバー「彼女はタイヨウの死に責任を感じていた。お前も不自然に思っただろう、一国の姫が貴様のような人間の家に来たことを。いつまでもそこに留まり続けたことを」 それは、確かにその通りだ。とはいえ、自分の好きにすればいいといったのが俺だったので特に聞くこともしなかった。 というか正直どうでもいいと思っていたような気がする。結局俺にとって、ユリアはお姫様という認識はあったものの、実感は乏しかった。 ただの、ちょっと変わった女の子がそこにいただけだ。 ファイバー「彼女はその償いにお前を利用したに過ぎん。貴様は彼女により巻き込まれ今こうして理不尽な戦いに身を投じ、己の大切な人々を危険に晒しているのだぞ!」 親父の死。確かに、ユリアはそれに責任を感じていただろう。それはたぶん、俺が少し何かを言ったくらいでどうにかなるもんじゃない。 今の俺なら、きっと少しはそれがわかる。自分が背負うものの重さの大切さと、その辛さが。それらを背負って、俺も今ここにいるんだから。 大翔「それは許す」 ユリア「は……?」 若干呆れた声が聞こえたがとりあえず無視。 大翔「ていうか許すも何もないんだよそんなもん。それでユリアが少しでも心の重荷を減らすことができるんならそれでいいだろ、いくらでも利用してくれて結構だっつーの。それが、俺がこうするって決めたことなんだから」 ファイバー「わけが分からんな。貴様は他人に迷惑をかけられるのが嫌いなのではないのか」 その言葉に思わず苦笑した。 大翔「分かってんじゃねーか。他人に迷惑かけられるのなんか絶対御免だ、俺はそんなの受け入れられるほど人間できてねーんだよ。だから、ユリアに迷惑かけられるのは問題ないんだろうが」 ユリア「ヒロト、さん? それって、どういう……」 ユリアも困惑している。 ああそういえば、ユリアには言った事はないのか。まあいちいち言うようなことでもないしな。 大翔「家族だろ、俺達」 それはもう、俺の中では当然になっていたことだ。この数ヶ月の生活でそうなっていたことだ。 大翔「俺はな、決めたんだよ。ずっと忘れてたことだ。そのために俺は親父に鍛えてもらった。俺は家族を守る。家族がいられる場所を守る。そのために、ここに来たんだ。だからファイバーはぶっ飛ばす、ユリアはつれて帰る。そんで世界もついでに守って、あとは新学期に備えるだけだ」 ファイバー「それが、貴様の戦う理由か」 大翔「戦う理由なんかじゃない。俺が俺でいるために必要なだけだ」 世界も他人も関係ない。一番自分勝手なのは、たぶん俺だ。 家族を守りたいから、家族が家族でいられる場所を守りたいから。そんな理由で、家族を危険に晒している。矛盾している、自分勝手だ。我が侭にもほどがある。 大翔「俺はガキだ、ただのガキだ。我が侭で自分勝手な。だからユリア、なーんにも、気にすんな。自分のやりたいようにやればいい、迷うかもしれないし躊躇うかもしれないけど、なにもしないよりきっとマシだ」 何かをすることは常に失敗の恐怖が付きまとう。自分の心が分からないまま動かなくちゃならない事だってある。 けど、動けばきっと何かが変わる。動かなければ、たぶん何も変わらない。だから動く、歩く、進む。 大翔「理由なんか小さいことだ。ユリアがどんな理由で俺の傍にいてくれたにしろ……俺は君に、目一杯救われてる。だからユリア、ありがとう」 ユリア「ヒロトさん……私は、あなたの傍にいても、いいの?」 おいおい、なんつーことで悩んでるんだか。今更も今更、そんな質問、答えるまでもなく答えは決まっている。 大翔「君が望むのなら、俺が望む限り」 ユリア「……うんっ!」 ユリアの涙に濡れた笑顔を見て、ほっとした。ああ、そうだ、俺はこれを取り戻しに来たんだ。 だから、そのためには―― 大翔「さあ――倒すぜ、俺の敵」 ファイバー「いいだろう――かかって来い。俺の、敵」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2816.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-1 快晴の青空の下、シュンとゼリスは群衆の織り成す熱気なかで揉みくちゃになっていた。 「連休の最終日だってのに、なんでこんなに大勢集まってるんだ?」 人のうねりが作り出す流れ。その隙間を縫うように進みながら、シュンが辟易として呟く。 「それだけ武装神姫の人気がある証でしょう。良いことではないですか」 それに答える声は文字通り、彼の頭上から降ってきた。 すっかり外出時における彼女の定位置と化した少年の頭の上に座って、ゼリスは呑気な感想を述べる。 「あのなゼリス。……今日何をしに来たか分かってるんだよな?」 そんな相棒に釘を指す意味でシュンは問いかける。 それに対しゼリスは「何を今さら?」といった態度で、はっきりと宣言した。 「この大会で優勝するために決まっているでしょう?」 シュンはやれやれと肩をすくめる。 それから中身を確かめるように、肩から下げたクォーターバックを背負い直す。バックのなかに入っている〝これ〟がどこまで通用するのか。不安な気持ちもあるけれど…… (ユウ、こいつにも期待してるぞ) ゼリスの反応が頼もしく感じられたのか、それとも周囲の熱気にあてられたのか。 シュンは会場に近づくにつれ不安とは別の意味で自分の気持ちが昂ぶっていくのを感じていた。 * 関東の首都圏から幾分離れた丘陵地帯に、摩耶野市という街がある。 今や多数の企業や研究施設が誘致された学術研究都市として多くの人々が暮すその街は、市の中心に公共施設や大型商業施設の集まった中央区があり、それを取り巻くように多くの民家や集合住宅が集まった住宅地区が広がっていた。 その住宅地区では今、そこかしこの住宅から鯉のぼりが上げられている。 その姿は街に色を添え、年に一度のゴールデンウィークの到来を告げていた。 そんな若葉の匂いも心地よい四月末の日曜日。 とある一軒家の庭先で、ひとりの少年がのどかな雰囲気とは対照的に真剣な顔でPDA(携帯情報端末)を開いていた。 庭には段ボールを継ぎ接ぎしたオブジェクトが鎮座している。造りは荒いものの各所に凹凸や障害物が設置されたそれは、彼の手による自作のテストフィールドなのだ。 「よし、次の動作チェックいくぞ」 少年の呼びかけに応じ、段ボールの上で小さな影が動く。 全長15cmほどの、褐色の肌に青と白のボディースーツをまとったオートマトン。 名前はゼリス。 彼女は彼――有馬シュンの武装神姫だ。 ゼリスは青いポニーテールを揺らしながら、テストフィールドを軽快に飛び跳ねる。 今ゼリスが身につけているのは、ハンドメイドの試作武装パーツだ。成形色も新しい試作武装。その性能を楽しむように、ゼリスは次々とアクロバティックな動きを披露する。 「実際に使ってみてどうだ、調子は?」 「……そうですね。若干肩アーマーの反応が遅いかもしれません」 ゼリスは段ボールのフィールドから大きくジャンプし、空中で繰る繰る回転しながらベランダに着地する。それから確認するように何度か肩を回した。 シュンの目には問題ない動きに見えるが、ゼリスは納得がいってない様子。 肩部にマウントされている馬蹄状のユニット。棒状のスラスターを備えたそれは、このハンドメイド武装の要になるパーツだ。それだけに確かに調整は念入りに行なうべきだった。 シュンはゼリスの隣に腰を下ろし、PDAにチェック内容を入力していく。 「ふたりとも~、お茶持ってきたよ~♪」 彼が書き込みを終えると同時に、ベランダにおさげの少女がやってきた。シュンの妹である有馬由宇だ。 由宇は両手でお盆を持ったまま、器用に片方の足で引き戸を閉めてシュンの隣に座る。 我が妹ながら、いいタイミングだ。テストもひと段落ついたところで休憩には丁度いい。……女の子が片足で戸を開け閉めするのはどうかと思うけどな。 「はい、ぜっちゃんには疲れたときのクーラントだよ」 「ユウ、ありがとうございます」 ゼリスは軽くジャンプすると由宇のつまむヂェリカンを空中で巧みにキャッチし、そのままふたりの間にちょこんと座る。 ちなみにヂェリカンとは神姫専用の嗜好品で、今ゼリスが受け取ったクーラント・ヂェリーは飲むとクールダウン効果が得られる。前にゼリスに聞いてみたら、お茶みたいな味で結構おいしいらしい。……いや、僕は人間だから決して飲んだりはしないけどな。 「テストの調子はどう?」 「やっぱり肩部ユニットの調整が必要みたいだな……」 シュンは冷えたアイスティーを受け取る代わりに、PDAを由宇にパスする。受け取った由宇は表示されたデータに目を通しながら「むむむぅ~」と眉を寄せた。 うーん、妹よ。武装神姫用の武装セットをいきなり自作するってのは、流石にハードルが髙かったんじゃないのか? ゼリスは数週間前に有馬家の一員となった。 しかし、ここで問題がひとつ。彼女には専用の武装パーツがセットされていなかったのだ。 そこで自称〝美少女神姫マイスター〟の妹、由宇が自作武装を作ると宣言したのだが、こいつにとっても武装パーツを一から自作するのは初めてのこと。 それでもなんとか一通り武装の組み立ては終わったものの、今は各部の調整作業に手間取っている状態。 シュンもできる限り妹に協力しようと、パーツの買い出しやこうしてテストを手伝ったりしている。しかし、これがなかなかうまくかない。 完成まで至らないうちに、気づけばもう四月も終わりだ。 週末からはゴールデンウィークに入る。由宇はもちろん、シュンにとってもなんとかこの連休中にテストを完了させるのが目標となっていた。 アイスティーで喉を潤しながら横目でゼリスを見やる。 ゼリスはクーラントヂェリーをこくこく飲みながら、由宇と一緒にPDAを覗き込んでいる。 その真剣な表情から他ならぬゼリス自身が一番、この自分専用武装パーツの完成を待ち望んでいることは間違いない。 ゼリスのためにもできる限り頑張りたいのだが……由宇みたいにパーツの設計や製作ができないシュンがやる気になったところで、せいぜい細々とした作業の手伝いくらいしかできない。それがもどかしい。 (僕も由宇みたいに、そっちの知識をもっと増やすべきなのかもな……) そんなことを考えながら、いつの間にか空を仰いでいた視線を戻す。 すると、真向いの住居からこちらに歩いてくる人影が見えた。有馬家のお隣さんであり、シュンの幼馴染でクラスメイトでもある少女――伊吹舞だ。 「はろ~、シュッちゃーん♪」 「どうしたんだよ、伊吹?」 満面の笑みで現れた伊吹に、シュンは内心呆れつつ答える。……きっとこいつには悩みとかないんだろうなあ。 そんなシュンの思いなど知らぬ伊吹は、由宇とゼリスに「やっほー。ユウちゃん、ぜっちゃん、元気~?」と気さくに挨拶を交わしている。 「……ふ~ん。ひょっとして、例のぜっちゃん専用武装のテスト中だった?」 「はい。現在予定シークエンスを終了し、クールダウンを行っています」 ゼリスの返答に伊吹は「やっぱりね」と納得顔。こう見えて伊吹は摩耶野市でも有数の武装神姫マスターだ。数少ない女性ユーザーの上位ランカーということで、その界隈ではちょっとした有名人であるらしい。 ゼリスのマスターになった際にも、伊吹には先輩マスターとしていろいろ助言してもらっている。そのためかゼリスも伊吹のことを信頼しているようだけど……マスターである僕よりも敬意を払ってるように思えるのは気のせいか? 「――別に、そのようなことはありませんよ?」 ゼリスがジトッとした視線を寄越す。――人の心を読むな。 「ねえ、シュッちゃん。ユウちゃんはさっきから何をうんうん唸ってるの?」 伊吹に言われて振り向くと、由宇はまだ低く唸り声を上げながらPDAにデータを打ち込んでいた。そのままディスプレイに目を走らせ、思案気に視線を漂わせていたかと思うと、 「う~~ん、だめだ~~っ」 急に倒れ込み、ベランダに寝転んだ。 「……あれ、マイさん来てたの?」 ころんと寝転んだまま、由宇はきょとんとした顔で伊吹を見上げる。 どうやらデータと睨めっこするのに夢中になるあまり、伊吹が来たことも気がついていなかったらしい。やれやれだぜ。 「どうしたのユウちゃん。何かトラブルでもあった?」 心配そうな伊吹に、シュンは武装パーツの調整で手間取っていることを教える。 「なるほど。要するに、システム的に複雑な部分の制御で悩んでるわけね」 「うん。もう少し実戦的なデータが取れれば、それを使って調整もできるんだけど……ここじゃあちょっと……」 一同の目の前には、例の段ボール製テスト用フィールドの姿があった。 ユウの要望でシュンが必死にいらない段ボールをかき集めて作り上げた代物だが、所詮は素人の工作。簡単なものならともかく、本格的なデータ収集に使うには無理がある。 「そういうことなら、丁度いいものがあるわ!」 伊吹は明るい声を上げ、ポケットから一枚のチケットを取り出す。 「なんだそれ?」 首を傾げると、伊吹は「ふふんっ♪」と得意げにチケットをシュンの目の前にかざす。 ちょうど映画の前売り券くらいの大きさのチケットだ。緑色をしたそれの中央には、大きく「公式トーナメント参加権」と印刷されていた。 「今度、神姫センターでトーナメント大会があるんだけど、この大会タッグマッチ戦なのよ。これにうちのワカナとぜっちゃんのコンビで参加しましょう!」 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/mh_rifujin/pages/193.html
Q: 604 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/12/07(金) 13 45 28 ID l/YoUm/G 以前は沼地にも出現していたのに 最近はすっかり砂漠にしか出現しなくなったドスゲネポスが理不尽です。 A: 605 ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン 2007/12/07(金) 15 01 38 ID HYWXHsB9 604 ドスゲネポスは意外と数が少ないのです。 沼地にいたドスゲネポスはハンターによって狩りつくされました。 このままでは砂漠の方も時間の問題でしょう。ギルドの迅速な対応が望まれます。 ドスゲネポス
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1166.html
「さなえっ! 今日はね、とっておきのプレゼントがあるんだよ!」 「…ほえ?」 テーブルの上に座り、お皿の上のクッキーを小さな口で咥えてはむはむと顎を動かしているさなえに、嬉々に声色を高くして声を掛ける。 呼び掛けに応えたさなえはこちらを振り向く際に口の動きを止めさせてしまい、半分だけ残った食べかけのクッキーをお皿の上にポロリと落としてしまう。 うーん、可愛い。 さなえを目前まで引き寄せて、自分の頬を満遍なく活用しさなえの頬面を思う存分に摩擦する。 一通り擦り終わり気持ちが落ち着いた所で、頬擦りに夢中で少し忘れかけていた本題に入る事にした。 「ゆ、はあっ、おねーさん、…あう、卑怯ですよお…」 「さなえが愛くるしいがいけないのよ」 顔を紅潮させ、それを隠すためか俯くさなえの額に軽く唇を当ててキスをする。 さなえはさらに動揺して面持ちをして、ついにはコロリと倒れてしまいテーブルの上から落っこちてしまった。 「ゆ、あう…」 「あっはっは! 今日持ってきたのはね、これなんだ」 私はさなえから見えない様に背中で隠していた『缶ジュース』なるものをさなえに見せ付ける。 手のひらに伝わる、握っているとひんやりと気持ちいい冷えた感触。 足元でまだ混乱して揺れているさなえのほっぺたに缶を当ててやり、脅かしてやる。 ぷにんぷにんで、弾力を持ち柔っこいそれに当てられた缶は吸い込まれるように軽くめり込んだ。 「ひゃうっ!?」 さなえはひっと身を起こし、私の足元からわき目もふらず後ずさりをする。 ただでさえパニック状態なのに、冷たい感触の刺激を受けて驚いたのだろう。 さなえはとうとう目の端に涙を浮かべて、声を押し殺し私の足に体を寄らせてすがりつく容体となってしまった。 …やりすぎたか。 ごめんねと一言ささやきながら床下に居るさなえを優しく抱きかかえ、さなえの体を小刻みに揺らして落ち着かせる。 不安そうなあんばいは拭えないものの、さなえは大分冷静さを取り戻したか、いつしか私に甘える態度を取ってきたのだった。 「ゆう…」 唇をツンと前に出して、瞼を閉じ何かを待っている素振りのさなえ。 その様子は上目遣いと言ったもので、…私にはさなえが何を求めているか、よーく理解出来てわかりきっていた。 しかし、先ほどイタズラをされたにも関わらず無防備なさなえにまた私の遊び心がくつくつとくすぐられて、…先ほどに懲りず、さなえをからかってやることにした。 もちろんイタズラをする私も悪いが、まるで誘うかの様なさなえのいじらしさが一番いけないのだ。 右手に抱えたまだまだキンキンに冷えている缶ジュースを、さくらんぼの様な果実の、悪魔的に誘惑しているさなえの小さな唇へと近づけてゆく。 「ん…、…やあっ!?」 予想していた生暖かい感触とは打って変わった冷たい刺激に、さなえは驚いたか頓狂な声をあげて動揺する。 缶の腹部を確認してみると唇の形に水滴が無くなっている他に、唇の形の真ん中部分が嫌にきれいにアルミ姿を覗かせていた。 さなえは体を引きつけさせて悶絶している様子である。 どうしたのだろうとさなえの姿を窺うと、口を半開きにして涙を堪えている。 …唇の先端だけではなく、舌の先っぽまで湿っている有り様だった。 「…なるほど。舌まで絡めてこようとして、さなえはえっちな子ね」 「うう、う…」 鼻回りを一層赤くして、恥ずかしさやら情けなさにつままれて震えているさなえ。 さなえの気持ちを察するに、恐らく今にでも私の胸に飛び込んで埋まりたい一心なのだろうが、イタズラをした当人が私であるためその場に立ち尽くすことしかできないのであろう。 …さなえの顔を見るとどうしても遊び心がくすぐられてしまい、ついつい意地悪をしてしまう。 いい加減にしないと、本当に取り返しのつかないことになってしまうため、私はここまでで自重することにした。 「ごめん、ごめん。もう調子に乗ったりしないから」 「…ほんと、ですか」 「ええ。愛しのさなえですもの、そう幾度もいじめたりなんてする筈がないわ」 私がさなえに陳述すると、さなえはまるでその物言いがからかいだと言わんばかりにいじけた様子で目線を投げかけてくる。 そしてとうとうさなえは抱き締められた状態ではあるものの私の胸に寄りかかった態勢から体を起こし、ツンとそっぽを向いて完全に態度を拗ねさせてしまった。 からかいと言うのは勿論さなえの言う通りで、私はただサラサラに手触りの良いさなえの髪の毛を撫でて機嫌が直るのを待つだけだった。 しばらく時間が経った頃、ようやくさなえが静かに私に体を預けてきた。 まだまだしかめ面でふて腐れた体裁ではあるが、大分良くなった方である。 「ふふ。…これはね、飲み物なんだ」 「…飲み物?」 さなえは缶ジュースに興味を持ってくれたみたいだ。 少々面白半分に羽目を外しすぎたため、取り合ってくれないのではないかという不安があったのだが、その様な様子も無くほっと一安心して胸を撫で下ろす。 興味津々にそれは何かと尋ねてくるさなえにはにかんで、缶ジュースのプルタブを開けてコクリと喉を鳴らし、一口だけジュースの中身を試し飲みをする。 ラベルで中身を判断できなかったのだが、どうやらこのジュースは炭酸ものの様である。 この世界では中々お目にかかれない、上等なものだ。 感動を共有したく、さなえを一気に抱え上げて缶のプルタブ口からジュースを飲ませようとするも、何故だかさなえは嫌々とだだをこねて一向に飲む気配を見せない。 嫌がっているというか、その様子は戸惑いのものであるように感じた。 「どうしたの、さなえ? やっぱり私の口付けた缶ジュースなんて、嫌なのかな」 「う、うう…。おねーさんったらわかってる癖に、いじわるしないでくださいよっ」 涙目になりながら、気恥ずかしそうな面持ちでふるふると体を動かし落ち着かないさなえ。 どうしてと、なるべく柔らかい声色を意識してさなえに尋ねる。 さなえは言い淀み、返事をひねり出すように私に目を向けてきた。 「だ、…だって!」 「だって?」 「おねーさんと、か、間接キスじゃないですかっ!」 私の中の大切だったものであろう、一線が胸のスキマへはじけ飛んだ様に思える。 しかし、そんなものは些細な事であった。 「あ、ひゃあ! くすぐったいですよ、いきなりさなえの体をまさぐるなんて…、…おねーさん?」 「さなえが悪い。いただきます」 ☆ ゆっくりのさなえを肩に乗せて、やけに広い館の廊下を見回る。 主に掃除箇所のチェックの為であるが、開いている窓を閉めたりなどのちょっとしたケアレスミスの尻拭いもある。 そしてその内に歩いている途中、ちょっとしたお客さんが足を運ばせていたのだった。 「にゃーん」 「…あら、猫ね。茶と黒のとら猫、どこから入って来たのかしら。足に泥をつけて歩き回って、困ったさんね」 廊下に猫が立っていた。 脅えて逃げ出す様子もなく、ただ腰をすわえてどっしりと居座るばかり。 あどけない表情をして舌にて体の毛繕いをしていて、緊張といった態度は見受けられず、とてもリラックスしているにゃんこであった。 口の端が綻んでしまう、ちんまい訪問者に近付いて顎回りを優しく撫でながらこいつを抱えて床に座る。 外から来たのだろうか、この可愛らしいにゃんこのお腹部分や手足の先所々に泥がこびり付いていた。 ポケットに入っている雑巾で、手足に付いた泥を取ってあげる。 カーペットについてしまった泥もある程度取り除き、指先で猫の喉を撫でてやる。 ゴロゴロと、猫は気持よさそうに喉を鳴らし、目を細めて私の膝に顔を預けたのだった。 「にゃふんっ」 …ものの数秒だろうか。 愛すべきおちびちゃんはすぐに私の膝越しに立ち上がり、ぴょんと勢いを十分に窓を跳ねてどこかへ去ってしまった。 この場所の階層は一階で、気まぐれの拍子に紛れ込んだのだろう。 手のひらにはまだあの子を触っていて感じた体温が、ふんわりとおぼろげに残っていた。 「…ふん。猫は、嫌いです」 さなえは、面白くなさそうな面持ちで鼻を鳴らす。 ずっと肩に乗り終始を眺めていて、嫉妬してしまったのだろうか。 …さなえには悪いが、とある対象に対して嫉妬されるというのは、ちょっぴり嬉しいかも。 「あら、なんで?」 「おねーさんを一人占めするからです。おねーさんにとっての猫は、私一人で十分ですっ」 このままさなえに何も気をかけないと言うのはあまりに気の毒で薄情であるため、会話を繋げる程度に相槌を打つ。 しかし、私の浅はかな発想など見抜けられているのか、さなえはつんとそっぽを向くのみ。 …その内に、何やらガサゴソと動くさなえ。 どこから用意して取り出したのか、いつの間にかさなえは猫耳のバンドを自分の頭に付けていた。 極め付けにさなえはもじもじと照れて体をたじろがせながら、私に振り向きこう鳴いた。 「に…、にゃーん///」 恥じらいながら、私に目を向けて微笑みかけるさなえ。 体だけでなく、ぷるぷると小刻みに柔らかく震える、上等のマシュマロの様な頬。 恥じらいをひしひしと感じているのか顔色を真っ赤に染め上げ、こしょばゆそうに表情をゆがめさせている。 瞳の端にはひとしずくの涙が溜まり、今にも零れ落ちてしまいそうだった。 気が付いたら手が既にさなえに伸びていて廊下に倒れ込んでいたが、仕方の無いこと。些細な事だろう。 「あ、おねーさん、…もっと、にゃ///」 もう駄目だ。いただきます。 ☆ 「うーん、ああん、嫌ぁ…」 「どうしたの、さなえ?」 業務もある程度終わり一度自分の用意された部屋に戻ってみると、さなえが何やら顔をしかめてむず痒そうに体をもじもじと、鬱陶しそうに動かしていた。 『んあぅ』『ああんっ』と、不機嫌そうな声を出して、一見やましい不祥事を起こして自責の念に駆られているかの様に網膜に映じるけれど…。 何をしているのだろうと、私はさなえに声を掛けた。 「あう、おねーさんっ。さなえの、耳がむずむずして気持ち悪いんです…」 「…軽い、微熱かな。頭痛とかはする?」 「ううん。耳が、痒い…」 …思案を巡らせるに恐らく、さなえは自分で耳掃除を行おうと躍起になって悪戦苦闘していたわけだ。 しかし、さなえには胴というか顔だけで、手と腕が無い。 どんなに体を動かし駆使しようと、何か長い棒の様な物を使わないと耳の掃除は行えない。 されども、自分一人で長い棒の様な物を使うのは危ないと判断したのだろう、…実際に私でもさなえが一人で耳掃除を行おうとしたら飛んで止めに行くだろう。 だからずっと、ベットの上で転がったり体をこすりつけたりしていた訳だ。 さなえにとっては死活問題だろう。 しかし、さなえには失礼だが、…私にとっては平然と届く欲求に悩むさなえを微笑ましく思い、思わずくすりと笑ってしまった。 「お、おねーさん! ひどいじゃないですか、さなえにとっては重大な問題なのですよ!?」 さなえが顔を真っ赤にし、まくしたてるように私に訴えかける。 瞳の端に涙を溜めているその様子も愛くるしく、いとおしい。 「ふふ。ごめんね、わかってますよ。どれ、ちょっと待ってなさい」 私はドレッサーにある小物入れから竹製の耳かきを取り出して、さなえの隣のベットの上に座り込む。 さなえが、私の体に寄り添ってくる。 耳かきをもっていない手でさなえの頬をハグする様に優しく撫で、自分の顔をさなえの頬まで持ってきて頬と頬をピタリと当てあう。 「じゃあ、体を楽にしてね」 「ひうっ!」 さなえの体を抱え上げ、片耳を私の目の真下に置くように膝枕をしてあげる。 ずっしりと、瞬く間に手のひら全体にに重みが伝わってゆき、それでいて張りのある感触がある種の香辛料として感じ取られ、質の良い手触り感をとやかくに堪能する。 少しずつさなえを手のひらから膝に下ろしてゆき、私の膝に乗せる。 膝一面に張り巡らされている神経は、しっかりとさなえの重さを感じ取っていた。 「うう、うあ、…」 さなえの態度を察するに、恐怖に打ち勝つために目を強く瞑り耐えて、怯えているあんばいで体を縮こませていた。 私の右隣に垢を置くためのティッシュを二つ折りにし用意し、さなえの耳周辺に乗っかっているサラサラした触りの緑髪を掻きあげてさなえの耳をむき出しにする。 耳掻きの温度はドレッサーの引き出しで長らく放置されていたため、片手に握りっぱなしだった今もなかなかに冷たい感触を保っている。 試しに匙を耳たぶ付近に当てると、ひやりとした感触が通ったかさなえは『やあ』と弱弱しい拒否の声を示した。 耳かきの匙でさなえの耳の穴の入り口周りをそっと触れるように掻き回し、1,2回回した所で一度匙に乗った垢をティッシュに乗っける。 そのまま耳の穴をなぞるように匙を奥へとスライドさせる。 冷たい、こしょばゆい感触がするのだろう。さなえは『ひゃうっ』と一度すっとんきょうな声をだすものの、再びじっと目を瞑り耐えるように身を固めさせた。 「…ちょっと、失礼じゃない? 私だって、耳かきくらいは出来るわよ。それに、上手よ?」 「うう、そうだとしても、怖いですよ…」 おじけつくさなえの頬と髪を空いた手で撫でてやり、さなえの耳かきを再開する。 ゆっくりにも産毛に当たる毛があるみたいで、細かくふさふさとした産毛をなぞるように匙の先っぽでカリ、カリと優しく丁寧を心がけて耳の垢を剥がしてゆく。 等間隔に続く、細かい振動。 「ひゃうっ!?」 「大丈夫よ。一つ、大きいのが取れただけよ」 その内奥に見えていた耳垢がペリリと、そこそこ大きい塊で剥がれて匙の上に乗っかり、さなえはこわばらせ引きつらせた表情を『ほっ』と柔らかいものに変化させる。 一度耳かきをさなえの耳穴から取り出し、トン、トンとティッシュの上に匙を叩いて垢を乗せる。 さなえには手足が付いていないからもっと耳垢が酷いものだと思っていたが、もともとゆっくりは汗をかかない生き物だ。 ただ日常生活にて出る老廃物については無力で、その様なものが蓄積してしまっても自身ではどうする事も出来ないのだ。 それゆえに、ゆっくりと共に生活を送っているものは、時折耳掻きなど垢を取る行為を行ってあげなけれなならない。 「あう、ひゃ、…ううん、あうぅ!」 …見られていて少し興奮をしているのか、鼻回りを主に赤みを帯びて懇願の眼差しを仕向けてくる。 上から見下ろして覗いてみるからにさなえの耳垢はこのくらいしか無いようだ。 さなえの耳穴は元々からきれいさっぱりといったもので、普段耳掃除を行っているのではないかと思ってしまうほど清潔なものになっている。 きっと、気に入らずいらいらしていた原因はあの大きな耳垢だろう。 もう一度一通りゆっくりと掻き回してみるものの、特に垢は取れなかったので私はこれ以上は耳を傷めるだけと判断し、反対の耳へ移ることにした。 さなえに反対側と告げて、今度は私の膝に向けていた耳を私の目線から見下ろせる位置へ持ってきてさなえに膝枕をする。 再び、さなえの耳周りを軽く撫でて匙を少しずつ奥の方へと進ませる。 さなえは先ほどまでの用心していた様子と打って変わって『あひぃ…』と喘ぎ声を漏らし、恍惚のくだけた表情を浮かべて気持ちよさそうに私に身を委ねるばかりだ。 「…」 ちょっと強めに、耳かきの匙を奥に当てつける様に指の力をいれる。 思ったとおり、さなえは安心しきった表情から『あひっ!?』と驚いてうろたえたものにする。 その後体を強ばらせるも、すぐにリラックスさせた肩の力が抜けた身に戻る。 『ひうん』『んやあ』と、心持ち、その、…。 …えっちな響きを持つ感嘆も、次第に口から漏れる回数が多くなってゆく。 意識したため、変な気分になってしまった。 「さなえ」 私は、さなえに呼びかける。 この時はまだ理性を保てていたのだと思う、…しかし。 自分としては気持ちの紛らわせにスキンシップを取るため何気なく話しかけたのだが、脳裏にて、さなえにイタズラをしてやろうと意地悪な発想がよぎり飛び交じって、…やがてその思考が私を支配し始めたのだ。 「なん、あふぅ、なんですか?」 さなえは耳かきの快楽に酔いしれながら、私に返事を返す。 きょとんとした面構えは、私を信頼してくれている証拠。 とても嬉しく思う反面、これからやるであろう事を考えると申し訳無いと全身が締め付けられる思いなのだが、…やがて考える事をやめた。 今の私には、抑え切れなかった衝動をぶつけるのみなのだ。 「気持ち、いいでしょ」 「はい、カリカリと柔らかい耳かきの感触と、垢が取れた時のピリッと電流が走る様な刺激がなんとも…。ああん!」 体をもじらせて自身がどんなに至福を味わっているのか丁寧に説明をしてくれるさなえ。 空いている片手にてすべすべときめ細かい肌触りであるさなえの頬を撫でながら、一つの物事を尋ねる。 その質問は私の欲求をそのまま表し、実行するのに手っ取り早いもの。 所詮悪魔のささやきというものなのだが、…さなえには悪いが、私の心身はすでに悪魔に委ねてしまっているのだ 「もっと、気持ちいいことしたい?」 「はいぃ…。さなえ、もっと気持ちいいことしたいです…」 「そう。いただきます」 さなえは目を細め幸せを噛み締めていた様子から、ハッと一気に目を見開くも時すでに遅し。 耳かきをゆっくりと引き抜き、私は一目散にさなえを抱き締めながらベットの上で覆い被さった。 ☆ 「んーしょ、よいしょ、ゆっくり!」 何やら、さなえは物置で整理をしているようだ。 『どうしても館の物置に行きたい!』とせがまれたから仕方なく連れて行ったのだが、さなえは何をしているのだろう…? 「ゆっ、ありましたおねーさん! 『ケンダマ』です!」 さなえは顔をほこりまみれにさせながら、嬉々と体を跳ねさせてけん玉の取っ手を口に咥える。 けん玉が予想以上に重いのか、咥えてもすぐに顎から取っ手が落ちてしまい、ゴトリと鈍い音を立てて床に落としてしまう。 されども、懸命にひたむきといった態度ですぐに咥えなおすさなえ。 さなえの焦々とした様子に、胸の奥がキュンと締め付けられるような感触がして、…何だか込み上げてきてしまった。 『昔の遊びに触発されました!』とか言っていたけれど、倉庫に行きたいというのはけん玉を探すためだったのか。 言ってくれれば、すぐに見つけてあげたのに。 …まあ、その様にあまり知恵が回らないところもまた、ほとばしるほどに可愛いのだけれど。 「ゆうっ! これをこうして、…え~い!」 さっそく玉を上手いこと横の皿に乗せようとするさなえだが、そもそも玉が上に行かず振り子として帰ってきた玉がさなえの頬にこつんと当たる。 さなえはむううと声を鳴らし照れながらもう一度玉を上にあげる。 今度は勢いを付けすぎたか、皿に乗るどころか一回転してしまい頭部に大きめである玉が勢い良くと当たってしまったのだった。 さなえは咥えていたけん玉の取っ手をポロリと落とし、しばしの間じっと震えて、やがて『ふえええええ』泣き叫びと鼻の上を真っ赤にさせてしまった。 「はーいはいはい痛くないですよー。さなえは強い子だから。ねっ?」 「お゛ねーさん、さなえ、さ゛な゛え゛!゛!゛」 ぷるぷると体を震わせながら瞳から涙をためらい無く流すさなえ。 耐えられなくなったのか、とうとう私の胸にうずまってしまったのだった。 …その様子に、もう一人の私が抑え切れなくなり、感情の赴くままにさなえを抱擁する。 そのままほこりまみれの壁にさなえを押し付けるだけだった。 「ゆ゛う! …ゆっ、そ、倉庫内で!?」 「我慢できません。いただきます」 ☆ 「おねーさん、なんだか熱っぽいよぉ…」 「そう。いただきます」 私はさなえの頬を甘噛みしながら所構わずさなえと共に倒れこんだ。 ネチョってもいいのよ しかし耳かきは何故あれほどエロいのだろう・・・ -- 名無しさん (2009-05-11 21 07 41) お姉さん、自重しろwどう見ても手遅れで重症ですが、本人達が良いのならそれで良いのでしょう -- 名無しさん (2009-05-15 15 08 38) これはエロい いいぞもっとやれ -- 名無しさん (2009-06-16 21 21 05) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/vocaloidchly/pages/1898.html
作詞:とみー(T-POCKET) 作曲:とみー(T-POCKET) 編曲:オレジナルP 作圖:九藤咲織 動畫:aska96 歌:初音ミク(調整:オレジナルP) 翻譯:cyataku(不當之處敬請指正) 看著戀愛中的你 * 步伐輕快地走向會合地點 明明只是去談論那件事情 穿上中意的外套 恍恍惚惚心神不定 對因為有點遲到而道歉的他 稍稍壞心眼地說道 「好冷啊 快走吧」 便走向常去的店鋪 將我請你喝的咖啡 一口,吞下的瞬間 你說道「那麼呢」,已經是那件事了嗎? 再多自言自語一點吧…。 無論看上去多麼開心 難過的痛楚依然殘留 在這絕對無法碰觸的距離 我看著戀愛中的你 從窗口看到 柏油路上暗淡消融的殘雪 明明從空中飄下的時候 是那麼的美麗 「下星期,就要約會了。該怎麼辦啊…。」 如此說道的你認真苦惱著的表情如此可愛 我不由得認真地回答了 為什麼呢? 明明那張笑臉一定不是為我綻放 還要不斷苦苦追尋嗎 如此痛苦,卻又無能為力 無論與你靠得多近 心意也不會重疊嗎 我看著有點害羞,又很開心的 戀愛中的你 如此痛苦,卻又無能為力…。 由組合『戀愛中的你是中二病』為您呈現的合作作品。 「恋する」也可用於表示「心愛的」之意。
https://w.atwiki.jp/odyssea_wiki/pages/53.html